俺、amanojakの新曲「デカメロン」のMVが完成した。SNSで見つけた推しに沼落ちした男の、画面越し純度100%の恋愛中毒コメディを、184.6BPMの高速J-ROCKに乗せて3分4秒。曲も、映像も、編集ソフトさえも自前で作った一本だ。
この記事では、歌詞の全文と、俺がこのMVをどう作ったかの裏側を全部書く。同じようにAIで音楽MVを作りたい人の役に立てばうれしいし、単純に「こんな回りくどい作り方をしてる奴がいるのか」と笑ってもらえたら、それはそれで本望だ。
INDEX — 目次
「デカメロン」というタイトルに込めたもの
タイトルの「デカメロン」は、14世紀イタリアの古典「デカメロン(十日物語)」と、デカいメロンのダブルミーニングだ。ボッカチオのデカメロンは、疫病から逃れた男女10人が、閉じこもった別荘で10日間ひたすら恋の話を語り合うという物語。つまり人類最古の「引きこもり恋バナ大会」だ。俺たちが毎晩スマホの中でやっていることと、実はそんなに変わらない。
そこに「デカいメロン」という、どうしようもなく即物的な語感を重ねた。高尚な古典と俗な語感が同居しているのは、恋というものが昔からずっとそういうものだからだ。歌詞の「マジでたわわじゃん」と「芳醇な香り漂う」が同じ曲に平気で同居しているのも、同じ理屈だ。
主人公は最後まで報われない。DMは既読スルーのまま。それでも彼は朝の光の中でスマホを胸に抱いて、満ち足りた顔で眠る。執着が画面の中で完結している限り、それは誰も傷つけない恋だ。俺はこの線引きだけは最後まで守って作った。彼は絶対に、現実の彼女に会いに行かない。その一線の内側でだけ、彼の恋は全力で肯定される。

歌詞(全文)
ねぇ 見てよ あのコ
マジでたわわじゃん
デカメロンみたいに
それだけさ For real
SNSで見つけた
君のプロフィール
マジでたわわじゃん
視線そらせない
芳醇な香り漂う
君に近づきたい
デカメロンみたいに
黒でも白でも茶色でも
どれもヤバイって
ねぇ 吸い付きたいんだ
君のLip to 僕のLip
止まんないこの気持ち
溢れそう Drip Drip
君に夢中
24/7 考えてる
スワイプしてもいつも
君の顔 浮かんでくる
DM送っても既読スルー
でも諦めない Never give up
いつか必ず振り向かせる
それまで待ってる Wait up
もう我慢できない
触りたいんだ Yeah
君に甘えたい
それだけさ For real
(サビ繰り返し)
バズってんの? あのTikTok
君の笑顔にヤラれた
リップシンクに合わせて
心臓が Boom Boom
Hey Siri プレイリスト作って
君の名前冠した曲だけ
リピート再生 毎日聴いてる
こんな俺って重いかな?
(大サビ)
ラストチャンス 告白する
返事くれよな Please
OKじゃなきゃ泣いちゃうよ
マジで好きなんだ For real
ずっと吸い続けていたい
この甘美な蜜を
溶けるような快感に
身を任せて
作り方1: 映像素材は俺が1カットずつ発注した
映像素材はAI生成(Grok Imagine)だ。ただし「AIに丸投げしたら出てきた」わけではない。俺が歌詞を読み込んで、必要なシーンを60カット以上設計し、1カットずつプロンプトを書いて発注した。彼女のキャラクターは「長い黒髪にワインレッドのドレス」で固定。彼は「黒パーカーにボサボサの黒髪」で固定。この2人の見た目が1カットでもブレたら、MVはただの素材集になってしまう。
途中で「彼女はもっと艶っぽく、彼はもっとストーカーみたいに」と方針を強めた回もある。ベッドでキャミソール姿のまま足をぱたぱたさせる自撮り、オフショルダーで髪をかき上げる横顔、ビキニでスイカに豪快にかぶりついて果汁が顎を伝うカット。彼側は、ネオンの路地裏に立ち尽くす影、彼女の写真を見つめてニタつく横顔。生成の上限に阻まれて全部は作れなかったが、足りない分は過去に生成した素材から「使える窓」だけを切り出して埋めた。素材は撮れ高、編集は台所事情との戦いだ。
作り方2: 歌詞63行と映像を1行ずつ結婚させた
このMVの核は「歌詞63行の全部に、意味の合う絵を1対1で割り当てる」という編集方針だ。「DM送っても既読スルー」の瞬間にはDM画面。「スワイプしても」ではスワイプする親指。「心臓が Boom Boom」では鼓動するネオンのハート。「溢れそう Drip Drip」では滴る黄金の蜜。歌詞カードを表計算のように並べて、俺が1行ずつ担当カットを決めていった。
そのために必要だったのが、歌声の正確なタイムスタンプだ。曲からボーカルだけをAIで分離して、音声認識で単語ごとの時刻を取り、曲の拍のグリッドに吸着させた。人力で聞きながら合わせるより速くて正確だ。それでも認識がズレた行が十数行あって、そこは波形を見ながら1行ずつ手で直した。「芳醇な〜」の伸ばした歌い出しなんかは機械が苦手で、最後は結局、耳と根性だった。

作り方3: 編集は自作ソフト「KO-Studio」でやった
そして編集。俺は既製の編集ソフトを使わない。「既製品がないなら、理想のソフトから作ればいい」という思想で、動画編集ソフト自体を自作している。それがKO-Studioだ。MV専用のタイムラインエディタで、映像トラック、歌詞トラック、エフェクトトラックを重ねて、クリップを並べて、プレビューして、書き出すところまで全部やる。今回のデカメロンも、233個のカットをKO-Studioのタイムラインに並べて組み上げた。
KO-Studioには今回のために「歌詞行駆動」の仕組みを足した。実測した歌詞の時刻表を読み込むと、歌詞1行ごとに割り当てたカットがタイムライン上に自動で並ぶ。184.6BPMという速い曲なので、カットの切り替え点は全部、拍のグリッドに吸着させている。サビは最小0.3秒のカット割りだ。手作業でこれをやったら日が暮れるどころか年が明ける。道具から作るのは遠回りに見えて、こういう時に一気に回収できる。
作り方4: 二重露光と、ピンクに濁った失敗の話
サビと大サビでは、ヴィジュアル系バンドの姿が映像の奥に透けて浮かび上がる。主人公の「理想の自分」が現実に滲み出してくる演出で、二重露光(スクリーン合成)という古典的な技法だ。参考にしたのは俺の過去作のMVで、あの「奥からバンドが浮かび上がってくる」画は、やっぱり何度やってもかっこいい。
ここで1つ、盛大に罠にハマった。動画の色データのまま合成したら、画面全体がピンクに濁ったのだ。原因は動画の色の持ち方(輝度と色差)にある。合成はRGBに変換してからやらないと、色差の中間値が持ち上がって全編マゼンタ被りになる。同じことをする人は気をつけてほしい。俺は全編ピンクのデカメロンを一度書き出してから気づいた。あれはあれで曲名的に正しい気もしたが、作り直した。

スタッフロールへのこだわり
このMVは、最後のスタッフロールまでが本編だ。エンドロールには俺のこだわりを全部詰めた。監督: 俺。脚本: 俺。撮影: 俺のプロンプト。主演(沼る男): え?俺?。心の声: ぜんぶ俺。そして制作: ME ……え?俺?。ハイライトシーンの上をクレジットが流れていくのを眺めながら、「全部同じ奴じゃないか」と笑ってもらう構成だ。
ふざけているようで、これは俺なりの正直なクレジットでもある。AIで作った作品は「誰が作ったのか」が曖昧になりがちだ。でもこのMVの監督も、脚本も、カット割りも、どの歌詞にどの絵を当てるかも、全部俺が決めた。AIは楽器で、演奏したのは俺。だからクレジットは全部俺。それを一番笑える形で書いたのがあのスタッフロールだ。
細かいこだわりも仕込んである。「メロン担当: スイカ(代役)」は、メロンの映像がどうしても可愛くならず、スイカの方が画になったから正直にそう書いた。本人(果物)の事務所都合により代役、ということにしてある。「衣装: 黒でも白でも茶色でも」はそのまま水着3色のこと。「DM既読スルー役: 推し(ノーギャラ)」は、彼女は一度も返事をしないままこのMVに出演し続けてくれたことへの感謝だ。Special Thanksは「いいねしてくれた君」。そして最後の一行、「この物語はフィクションです。執着は画面の中だけ。」。この一行が、この曲の全部だ。
登場人物
沼る男(主人公)。黒パーカーの20代で、優しくて、ちょっと重い。行動力はスクショ連打とDM送信に全振りしていて、現実で彼女に会いに行く勇気はない。だが俺は、その一線を越えないところこそが彼の美学だと思って描いた。推し(画面の中の君)は、ワインレッドのドレスがトレードマークのインフルエンサー。ビーチでもプールでも夜景のルーフトップでも、いつだって画面の向こうで輝いている。DMの返事はくれない。それもまた彼女の仕事だ。
そして理想の自分(ヴィジュアル系バンド)。彼の内なる衝動が具現化した深紅と深青のバンドマンたちで、サビのたびに現実へ滲み出してくる。歌っているのは、彼が言えなかった本音そのものだ。
サウンドの話: 昭和平成の王道ロックを、真正面から
曲の話もしておく。サウンドの軸は、昭和平成の王道ハードロックへの憧れを隠さない高速J-ROCKだ。184.6BPMで疾走するリズム隊の上を、歌謡曲マナーのキャッチーな歌メロと泣きのギターが駆け抜ける。Aメロで抑えて、Bメロで視界が開けて、サビで爆発する。ひねくれた構成が流行る時代に、俺はあえてこの王道の起伏を真正面からやり切った。ひねくれ者(あまのじゃく)がド直球を投げるから面白いのだと思っている。
2番の後の「バズってんの?」からはリズムが跳ねてダンスホールの空気に切り替わる。「Hey Siri」のビルドで一度感情を溜めて、大サビで全部を解放する。そして最後の囁きパート。それまでの喧騒が嘘みたいに、吐息だけの静かな世界で終わる。3分4秒、飽きさせる隙間は作っていないつもりだ。イヤホンで聴くと、囁きパートの吐息の距離感がいちばん気持ち悪くて、いちばん良い。
この一本で学んだこと、そして次回作へ
今回のMVで俺が学んだ一番大きなことは、「シンクは正義」だということだ。歌詞と絵が0.3秒ズレただけで、観ている人は理由も分からず冷める。逆に、歌詞と絵がぴったり噛み合った瞬間、映像は音楽の一部になる。そのために音声認識で歌声を実測して、拍に吸着させて、それでもズレた行は耳で直した。地味な作業の積み重ねが、最後の3分4秒の気持ちよさを作る。
あと、失敗も財産だ。全編ピンクに濁ったデカメロン(マゼンタ事変)も、メロンが可愛くならずスイカに代役を頼んだことも、全部この記事のネタになった。AI制作は失敗のコストが低いから、思い切り転べる。転んだ数だけ、次のMVは速く、うまく作れるようになる。次回作もKO-Studioと一緒に、もっと変なこだわりを詰めた一本を作るつもりだ。楽しみにしていてほしい。
見どころ、まとめ
サビの「黒でも白でも茶色でも」で、彼女の水着が黒、白、茶と歌詞の順番どおりに3連で切り替わる。3回あるサビの全部で色が揃っているか、ぜひ確かめてほしい。ラストのDelivered表示のまま朝を迎えるカット、既読は最後までつかない。それでも彼が幸せそうなのがこの曲の答えだ。
それでは本編をどうぞ。感想は「わかる」の一言だけでもうれしい。高評価とチャンネル登録が次回制作の何よりの励みになる: 俺のYouTubeチャンネルはこちら
本作はAIで生成したフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。ストーカー行為を推奨するものではありません。楽曲・映像 ©amanojak (CC BY-NC-SA 4.0)


