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今回はですね、ずっと書きたくてうずうずしていた記事です。先日完成した短編AI映画『SEVEN DAYS』(約5分)の制作裏話を、成功も失敗も、恥ずかしいやらかしも全部ひっくるめて、洗いざらい書いてしまおうという回でございます!🎬

先にお断りしておきますと、この作品は完全なフィクションです。登場する人物も団体も出来事もすべて架空のもので、実在のいかなる存在とも関係ありません。そしてハッキングをはじめとするサイバー犯罪は重大な違法行為です。本作は犯罪を助長する意図を一切持たず、むしろ「その先に待っているものは何か」を描くために作りました。この前提だけ、どうか頭の片隅に置いて読んでいただけると嬉しいです🙏

まずは本編をどうぞ。5分です👇

SEVEN DAYS 本編スチール ハッカーの後ろ姿
『SEVEN DAYS』本編より。雨の夜、モニターの光だけが灯る部屋 © 2026 AMANOJAK
INDEX — 目次
  1. すべての始まりはMR ROBOTでした
  2. 『SEVEN DAYS』はこんな話です
  3. 絵コンテを9コマのグリッドにするという発明
  4. 今回の制作パイプライン、全体像はこうです
  5. 動画生成AIと仲良くなるための細かい知見
  6. 個人AI映画制作の、リアルな懐と時間の話
  7. やらかし全記録。同じ轍を踏みたくない方へ
    1. やらかし其の一。顔だけ揃えて世界がバラバラ
    2. やらかし其の二。無音の映画を「完成」と言い張る
    3. やらかし其の三。24fpsの映像を30fpsに変換して画面がガタガタ
    4. やらかし其の四。17本作って全部お蔵入り
    5. やらかし其の五(?)。逮捕シーンが生成できない
  8. 音の設計。BGMはSuno、声はひとりの語り手
  9. なぜピエロなのか
  10. 文字とカードのデザイン
  11. 仕上げの話。ロゴ、そして見えない透かし
  12. おまけの一敗。1分の予告編は「何を隠すか」の設計でした
  13. 完成した『SEVEN DAYS』はこちらから
  14. 使った道具たち

すべての始まりはMR ROBOTでした

そもそもなんでハッカーの映画なんか作ろうと思ったのか。犯人は、AmazonのドラマMR ROBOTです。はい、あれです。エミー賞もゴールデングローブ賞も獲った、ラミ・マレック主演の超傑作サイバースリラーです。

ある夜、何の気なしにPrime Videoで再生ボタンを押したんですよ。そこから記憶がありません(笑)。気づいたら夜が明けていて、頭の中はエリオットの独白でいっぱいでした。孤独なハッカーの視点、退廃したニューヨークの空気、緑色に発光するターミナル、社会の底で膨れ上がる怒りと承認欲求。全部が全部、今まで見たどのドラマとも違う手触りで、完全にやられてしまいました😭

何より衝撃だったのは、あのドラマの「静けさ」です。派手な爆発もカーチェイスもほとんどないのに、キーボードを叩く音と無機質なモニターの光だけで、心臓を掴まれるような緊張感が延々と続く。ハッキングの描写も本物志向で、コマンドひとつひとつに説得力がある。あの息づまる空気感は、映像と音の設計だけで作られているんですよね。「雰囲気」というものがどれだけ強い武器になるか、まざまざと見せつけられました。

まだ観ていない方は、ぜひ。というか観てください!私が作った5分の短編なんかより先でいいので(笑)。Prime Videoで配信中です👇

▶ MR. ROBOT / ミスター・ロボット シーズン1 (字幕版) | Amazon Prime Video

個人的に一番刺さったのは、主人公エリオットの目線で世界がじわじわ歪んでいくところです。彼は人と話すのが苦手で、夜な夜な他人のアカウントを覗くことでしか世界と繋がれない。その孤独の描き方が、単なるキャラ設定じゃなくて、カメラの構図や画面の余白にまで染み込んでいるんですよ。人物をフレームの隅っこに追いやる独特の構図、会話の不穏な間、見ているこちらが落ち着かなくなる余白。そしてハッキング描写の技術的な正確さと、人間の心理描写が、同じ熱量で作り込まれている。こういうドラマは本当に稀有だと思います。

ちなみにMR ROBOTは全4シーズンで完結済みです。つまり今から観る方は、打ち切りの心配も引き伸ばしへの苛立ちもなく、最初から最後まで設計され切った物語を一気に浴びられるということです。羨ましい限りです。シーズン1の衝撃と、最終シーズンの静かな回収まで、無駄なエピソードがひとつもありません。

で、観終わったあとに残ったのがこの衝動でした。「あの緊張感を、自分の手で一度立ち上げてみたい」。物語を借りるんじゃなくて、あの空気感そのものを主題にして、自分のオリジナルの物語を組み立ててみたい。それが『SEVEN DAYS』の出発点です。だからこの作品は、MR ROBOTという傑作への、私なりの全力のオマージュでもあります。

『SEVEN DAYS』はこんな話です

舞台はある街の片隅、古びた団地の一室。主人公は21歳の若者です。貧しくて、督促状とカップ麺に囲まれた生活をしていて、でも誰よりも聡明。昼は学生、夜は世界中のサーバーへ手を伸ばす侵入者。彼にとってハッキングは金であり、退屈しのぎであり、自分がまだ特別な存在であることを確かめる唯一の儀式でした。

SEVEN DAYS 本編スチール 督促状とカップ麺
机の上の督促状とカップ麺。彼の生活のすべて © 2026 AMANOJAK

ある夜、彼はいつものように無防備なサーバーへ忍び込みます。また簡単な獲物だ、と嘲笑った瞬間、暗闇の中で最初のひびが入ったことに、彼はまだ気づいていません。

翌日から、奇妙なことが起き始めます。勝手に再起動するマシン。埋め尽くされたメモリ。ひとつ、またひとつと沈黙していく標的たち。深夜に鳴る呼び鈴。誰もいない扉。二重に掛けた鍵。割られた窓ガラス。段ボールで塞いだだけの隙間から吹き込む、冷たい夜の風。自分は狩る側のはずだったのに、いつの間にか狩られる側になっている。それでも欲望は理性に勝ってしまう。もっと大きな標的を。もっと強力なサーバーを。今夜こそ、俺は無敵だ。そして7日目、午前4時58分。すべてが終わります。

SEVEN DAYS 本編スチール 赤い世界地図
赤く点滅する世界地図。彼の「帝国」が膨張していく © 2026 AMANOJAK

タイトルの通り、映画はDAY 1からDAY 7までの7日間を、ドキュメンタリー風の英語ナレーションで淡々と刻んでいきます。上り詰めるのに7日、堕ちるのも7日。万能感の絶頂と破滅が同じ7日間の中に同居している、そういう構成です。冒頭にBASED ON A TRUE STORYと出ますが、これはあくまで実録風という演出上の嘘です。念のため!(笑)

なぜ実録風にしたかというと、この様式が一番「他人事じゃなくなる」からです。作り話ですと最初に宣言するより、これは本当にあったことですという顔で淡々と語られるほうが、観ている人の背筋は冷える。ドキュメンタリーの文法を借りると、派手な演出をひとつもしなくても、日付と時刻の表示だけで緊張感が積み上がっていきます。DAY 5 FRIDAYという白い文字が出るだけで、ああ、あと2日で終わるんだ、って観客が勝手にカウントダウンを始めてくれるんです。

主人公の造形も、MR ROBOTの空気を私なりに翻訳したものです。グレーのフーディを着た痩せた若者、伸びっぱなしの髪、雨の似合う古い団地、深夜のカップ麺。どこの国の話とも明言しない無国籍な街並みにしたのは、この物語が「どこでも起こりうる話」であってほしかったからです。彼に名前を与えなかったのも同じ理由です。ナレーションは彼を一度も名前で呼びません。最後まで、heのままです。

絵コンテを9コマのグリッドにするという発明

ここからが制作の裏側です。今回の映像制作で一番の発明だったのが、この「9コマ絵コンテグリッド方式」でした。

SEVEN DAYS 制作用9コマ絵コンテグリッド
実際に使ったオープニング(S02)用の9コマ絵コンテ。各コマにTIME・カメラ・演出を焼き込んである © 2026 AMANOJAK

やり方はこうです。まず画像生成AIで、3×3の9コマに区切った1枚の絵コンテ画像を作ります。各コマには経過秒数(TIME)、カメラの動き、被写体の動作、セリフや音の指定まで、白いモノスペースフォントで直接焼き込んでしまいます。上の画像が実物です。オープニングの13秒間が、9つのコマで設計されているのがわかると思います。

そしてこの絵コンテ画像を丸ごと1枚、動画生成AIのSeedanceに参照画像として渡して、「Panel 1から9を順番にアニメートせよ」と指示するんです。すると9コマの流れを汲んだ、カメラワークつきの連続したショットが音声込みで生成されます。映像生成にはRunwayのプラットフォーム経由でサードパーティ製モデルのSeedanceを使いました。

この方式の何がすごいって、1コマずつバラバラに生成するのに比べて、時間の流れとカメラの意図をAIに正確に伝えられるんですよ。「じわじわ寄っていって、最後にタイトルが浮かぶ」みたいな演出は、単発の画像参照では絶対に再現できません。9コマに分解して時間軸ごと渡すことで、初めて「編集された映像」としての呼吸が生まれます。ちなみにプロンプトの最後に「絵コンテのキャプションやグリッド線は映すな」と念押しするのがコツです。これを忘れると、本編にTIME 4.5sという文字が堂々と映り込みます(1敗)😇

今回の制作パイプライン、全体像はこうです

絵コンテの話をしたので、工程の全体像もざっくり共有しておきますね。5分の短編とはいえ、やることは長編と同じでした。

まず脚本と構成表から。DAY 1からDAY 7のそれぞれに「その日に起きる異変」と「彼の心理状態」を1行ずつ割り当てて、全34カットのカット表に落とし込みます。この段階でカットごとの尺の目安も決めてしまいます。見せ場は13秒から15秒、標準のシーンは8秒から10秒、インサートは5秒から8秒。尺の設計を先にやっておくと、あとで編集室(という名の深夜のデスク)が地獄にならずに済みます。

次にキャラクターシートと美術ボードの確定。主人公の顔だけじゃなく、部屋の全景、机まわり、地上から見た窓、団地の外観まで、この作品世界の「聖書」になる画像セットを先に固めます。ここを固めてから、シーンごとに9コマ絵コンテを生成。絵コンテにOKを出したら動画生成へ、という流れです。

上がってきた動画は、必ず全フレームを1枚に並べたモンタージュ画像にして目視チェックします。AI生成映像って、10秒のうち9.5秒完璧でも、残り0.5秒だけ指が6本になったり机のマグカップが消滅したりするので(笑)、この視認工程だけは絶対にサボれません。音声も波形と数値の両方で確認します。それが終わったら解像度とフレームレートの正規化、仮結合、ナレーション収録、効果音の配置、音楽の配置、ミックス、カラーグレード、ロゴ焼き込み、透かし、最終書き出し。文字にすると一本道ですけど、実際は各工程で手戻りが出て延々と行ったり来たりします。最終的に、生成したのに使わなかったクリップも含めると、本編カット数の3倍くらいの映像を作っていました。

動画生成AIと仲良くなるための細かい知見

Seedanceで数十本生成してわかった、細かいけど大事な知見も置いておきます。これから同じことをやる方の時短になりますように🙏

ひとつめ。開始フレーム指定と参照画像は同時に使えませんでした(モデルの仕様です)。だからこそ、参照は9コマ絵コンテグリッド1枚に全部集約する方式が効くんです。時間軸もカメラも美術も、あの1枚に焼き込んで渡す。制約を逆手に取った格好です。

ふたつめ。1回の生成尺は最大15秒で、シーンごとに可変にできます。全カットを同じ尺で生成するより、見せ場だけ長尺にして、つなぎのインサートは短くする。当たり前のようで、生成コストと編集の自由度のバランスがここで決まります。

みっつめ。音声込み生成(ネイティブオーディオ)がとにかく強い。映像と一緒に環境音や動作音が生成されるので、キーボードを叩けば打鍵音が、ドアを蹴破れば衝撃音が、映像と完全に同期した状態で上がってきます。あと付けの効果音では絶対に出ない密着感です。本作の見せ場カットは全部この方式で、室内の静かなカットは無音生成して効果音を後付けする、というハイブリッドにしました。

よっつめ。これはさっきも書きましたが、プロンプトの末尾に「絵コンテのキャプション、TIME表記、グリッド線、字幕、UIは映すな」と明記すること。グリッド参照方式の副作用への保険です。おまじないみたいですが、効きます。

個人AI映画制作の、リアルな懐と時間の話

気になる方も多いと思うので、リアルな話もしておきます。動画生成はクレジット制で、失敗した生成にも成功と等しくコストがかかります。つまり「とりあえず生成してみてから考える」を繰り返すと、作品より先に財布が完成します(笑)。だからこそ絵コンテ段階の設計と、生成前のチェックが命なんです。9コマ絵コンテ方式は映像の品質のためでもありますが、白状すると半分は財布のためでもあります。生成する前に紙の上(画像の上)で映画を一度完成させておく。昔の映画人が当たり前にやっていたことを、AI時代にもう一度やっているだけとも言えます。

時間のスケール感でいうと、構想と脚本に数日、映像の生成と作り直しに数日、音とミックスと仕上げに数日、という感じでした。従来の映像制作では考えられないスピードです。ただ、誤解されがちですが「AIだから一瞬」では全然ないです。生成そのものは数分でも、何を作るか決めることと、上がってきたものを確かめることは、全部人間の仕事として残ります。体感では、制作時間の8割は生成待ちと視認チェックと編集のやり直しでした。AIは筆が速いだけの、こだわりが強くてたまに嘘をつく相棒、くらいの距離感が正しい気がします。

やらかし全記録。同じ轍を踏みたくない方へ

ここからは失敗談のコーナーです。正直に言うと、この作品は一度ほぼ完成まで行ってから、大部分を作り直しています。理由は全部、私の詰めの甘さでした。同じことをやる方の役に立つかもしれないので、恥を忍んで書きます。

やらかし其の一。顔だけ揃えて世界がバラバラ

最初のバージョンでは、主人公の顔だけを参照画像で固定して、各カットを個別に生成していました。結果どうなったか。カットが変わるたびに、部屋が別の部屋になる。机が変わる。モニターの数が変わる。窓の位置が変わる。人物は同じなのに、世界が毎カット引っ越しするんです(笑)。

映画は同一作品イコール同一世界。顔の一貫性は必要条件であって十分条件ではない、という当たり前のことを痛感しました。作り直しでは最初に「美術バイブル」を確定させました。キャラクターシート、部屋の全景、机まわり、地上から見た窓、団地の外観。このセットを全カットの生成で必ず参照させて、机の上のカップ麺の位置まで同じ世界を維持する。地味ですが、これをやるかやらないかで「映画」に見えるかどうかが決まります。

具体的に何を固定したかというと、モニターは3台でアームの向きまで指定、机の上には飲みかけの緑の缶とマグカップとカップ麺、壁には付箋だらけのコルクボード、窓の外は常に雨、部屋の照明は電気スタンド1灯だけ。ここまで決めます。カラーグレードも全カット共通で、寒色に沈めた青緑基調に、警告表示と督促状の赤だけを差し色として通しました。観客は意識しなくても、無意識にはちゃんと気づくんですよね。「この部屋、ずっと同じ部屋だ」って。その無意識の安心感が、物語への没入を支えてくれます。

やらかし其の二。無音の映画を「完成」と言い張る

これは本当にお恥ずかしい話なんですが、一度、無音のラフカットを「できました!」と出したことがあります。映像を並べ終えた達成感で、音のことが頭から吹き飛んでいたんですね。映画の成果物は映像と音が一体です。特に本作は全編英語のナレーションが背骨の作品なので、音のない状態は完成度0%と同義でした。

反省して、音は最初から設計に組み込む方式に改めました。ナレーション台本を先に書く。効果音のリストを作る。音楽の入る位置を決める。それから映像を編集する。順番を変えただけで、作品の密度が別物になりました。

やらかし其の三。24fpsの映像を30fpsに変換して画面がガタガタ

完成間近になって、「映像がなんかカクカクする」問題に悩まされました。原因を調べたら、生成された素材が24fps(1秒24コマ)なのに、編集で30fpsに強制変換していたせいでした。24コマを30コマに引き伸ばすと、同じコマが不規則に複製されて、パンやスクロールのたびにガタつきが出るんです。ジャダーというやつですね。全タイムラインを24fps統一で組み直したら、嘘みたいにヌルッと滑らかになりました。映画が24fpsで作られ続けてきた理由を、体で理解した瞬間でした🎞️

やらかし其の四。17本作って全部お蔵入り

室内のインサートカット用に、静止画をゆっくりズームさせる、いわゆるKen Burns風のクリップを17本量産したことがありました。並べてみたら、動画生成したカットの中に混ざると「動きの質」が違いすぎて悪目立ちする。全部お蔵入りです(涙)。同じ止め絵でも、AIが生成した「空気の揺らぎのある静止」と、機械的なズームでは、観客の目に映るリアリティがまるで違うんですね。授業料だと思っています。

やらかし其の五(?)。逮捕シーンが生成できない

これはやらかしというより面白い発見だったんですが、クライマックスで警察が権利を読み上げるシーン、生成AIのモデレーションに2回拒否されました。拘束の描写がガイドラインに触れるようです。なるほどそう来たかと。最終的にそのシーンは別テイクの素材を組み合わせて成立させました。AI映画制作は、こういう「生成できない表現」との知恵比べでもあります。

音の設計。BGMはSuno、声はひとりの語り手

音楽はSunoで作ったオリジナル曲を5つのキューに分けて配置しています。オープニングの不穏な立ち上がり、日常パートの空虚なミニマル、異変が積み重なるパートの脈打つような低音、そしてラストへ。ちなみに強制捜査のシーンだけは、あえて音楽を全部抜いています。無音こそ最大の音響効果、というのはMR ROBOTから学んだことのひとつです。

ナレーションはローカルの音声合成で、ひとりの英語話者の声に統一しました。複数の声で芝居をさせるより、ドキュメンタリーの語り部がひとりで淡々と進行するほうが、実録風の温度になるからです。台本を書くときに気をつけたのは、一文を短くすること、現在形で書くこと、そして数字を効かせることでした。Seven days. That was all it took. みたいな、短くて硬い文がナレーションの声質と一番相性が良かったです。ちなみに強制捜査シーンの警官の声だけは別系統で作って、無線越しの質感に加工しています。

効果音はキーボードの打鍵、雨、ガラス、深夜の呼び鈴、エラー音、サイレンなど、必要な音を30種類ちょっとライブラリ化して、タイムラインに一つずつ手で置いていきました。ここでも一敗していて、最初は緊張感を出そうとドローン音(持続する低い唸り)を全編に敷き詰めていたんです。試写で「不快」という率直すぎる感想をいただきまして(笑)、全廃してBGM主体に組み替えました。効果音も「怖い音を足す」より「音を抜いて静けさを作る」ほうが何倍も効く。音響は引き算のほうが難しいというのが今回一番の学びでした。

なぜピエロなのか

SEVEN DAYS 本編スチール モニターに映るピエロ
モニターに一瞬だけ現れる「彼」。本編では瞬きの間に消えます © 2026 AMANOJAK

本作には全編を通して、不穏なピエロのモチーフが登場します。ログの中に紛れ込むアスキーアートのピエロ。グリッチの中に一瞬浮かぶ顔。主人公が調子に乗れば乗るほど、ピエロは画面の奥からこちらを見ています。

ピエロは「彼を嘲笑う何者か」であると同時に、主人公自身の姿でもあります。自分を天才だと信じて疑わない若者が、実際には誰かの掌の上で踊らされている道化かもしれない。ラストに彼へ突きつけられる英語の一文にすべてを込めたので、これから観る方はそこだけ楽しみにしていてください。ネタバレはこの記事では絶対にしません(笑)。

タイトルを7日間にしたのにも理由があります。7日は世界を創造できる長さであり、同時に人生が壊れるのにも十分すぎる長さです。DAY 1で彼は神さまの気分になり、DAY 7の午前4時58分に人間に戻される。ちなみに4時58分という中途半端な時刻は、5時ちょうどの「キリの良さ」をわざと外しています。運命って、キリの良い時間には来ないものなので。

SEVEN DAYS 本編スチール CRITICAL FAILURE
DAY 3。赤い警告が彼の帝国を侵食し始める © 2026 AMANOJAK
SEVEN DAYS 本編スチール 割られた窓
DAY 4。デジタルの報復が、現実の窓ガラスを割って入ってくる © 2026 AMANOJAK

文字とカードのデザイン

タイトルや日付カードの文字まわりも、地味にこだわったところです。装飾的なフォントは一切使わず、等幅フォントの白文字だけで通しました。ターミナル文化圏の物語なので、画面に出てくる文字は全部「システムが表示していそうな顔」をしていてほしかったんです。SEVEN DAYSのタイトルも、字間を広めに取った白文字が暗い部屋の上にすっと浮かぶだけ。そして映画の最後は、派手なエンドロールではなくSTAY SAFE ON THE INTERNETという一枚のカードで締めています。あれだけ不穏なことをやり切った映画の、最後の一言がこれ。我ながらちょっと意地悪で、気に入っています(笑)。

仕上げの話。ロゴ、そして見えない透かし

編集と仕上げはffmpegと自作の編集環境KO Studioで行いました。カラーグレードは寒色に沈めて、MR ROBOT由来のシネマティックな青緑を基調に。チャンネルロゴは画面の四隅をランダムに巡回する方式にしています(前作のMVで確立したやり方です)。

今回初めて挑戦したのが、不可視の電子透かしです。見た目には一切わからない形で、全フレームに所有者情報を埋め込んであります。周波数領域に情報を織り込む方式なので、多少の再圧縮では消えません。AI生成映像は転載や無断利用と隣り合わせなので、こういう自衛手段はこれから必須になっていく気がします。公開前には、書き出した動画をわざと再圧縮して劣化させた状態でも埋め込んだ情報がちゃんと復元できるか、実際にテストして確認しました。このあたりの技術的な深掘りは、需要がありそうならまた別の記事で書きますね。

SEVEN DAYS 本編スチール DAY7カード
DAY 7 04:58。この直後に何が起きたかは、本編で © 2026 AMANOJAK

おまけの一敗。1分の予告編は「何を隠すか」の設計でした

本編が完成したあと、X用に1分のティザー予告編を作ったんですが、ここでも見事に一敗しています。最初に作ったバージョンは、本編の見せ場を頭から順番に全部詰め込んだ、いわば5分を1分に圧縮したダイジェストでした。一見よくできてるんですよ。でも試写で一刀両断されました。「これ、結末まで全部見せてるじゃん。誰が本編を観るの?」って。ぐうの音も出ませんでした😇

そうなんです。予告編は「何を見せるか」じゃなくて「何を隠すか」の設計なんですよね。作り直したバージョンでは、結末に繋がる要素を全部抜きました。ピエロの正体も、ラストの台詞も、7日目に何が起きたのかも一切見せない。不穏な兆候だけをじわじわ積み上げて、DAY 7 04:58の表示が出た瞬間にぶった切って暗転。そして最後に「本編フル版公開中」の誘導カードで締める。ダイジェストと予告編は、似て非なるどころか、ほとんど正反対の設計思想の産物でした。映画会社の予告編職人さんたちを心から尊敬した1日です。

完成した『SEVEN DAYS』はこちらから

そんなこんなで七転八倒しながら完成した5分間です。モニターの光だけが灯る部屋で始まり、午前4時58分に終わる7日間。ぜひ部屋を暗くして、ヘッドホンで観てください🎧

5分だけ、あの部屋の住人になってみてほしいのです。そして観終わったら、あなたがこの7日間をどう見たか、コメントで教えてもらえたら嬉しいです。彼を「自業自得」と切り捨てる人と、「ちょっとだけわかってしまう」と苦い顔をする人。作った本人としては、どちらの感想も等しく正解だと思っています。高評価とチャンネル登録も、次回作の何よりの燃料になります🙏

チャンネルではこの他にも、メキシコの祭りで大暴れする猫のバンドだったり、地下都市を舞台にしたSFシリーズだったり、ひと夏の切ないアニメ調ミュージックビデオだったり、ジャンルもトーンもバラバラなAI映像作品を公開しています。今回のようなシリアス一辺倒じゃないので、疲れた日はぜひ猫のほうをどうぞ(笑)👇

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使った道具たち

映像生成はRunway経由のサードパーティ製モデルSeedance。音楽はSuno。ナレーションはローカル音声合成。編集はffmpegと自作環境KO Studio。制作を手伝ってくれた自作AIエージェントのセバスチャンとルナにも、いつも通り感謝を。監督・脚本・編集はAMANOJAKです。

個人でもここまで作れる時代が来ています。頭の中の世界観を、脚本から映像から音楽まで丸ごとひとりで形にできる。生成AIの映像制作はまだ発展途上で、思い通りにいかないことのほうが多いですが、その不自由さと知恵比べする過程そのものが、たまらなく楽しいです。この記事が、同じようにAIで物語を作ってみたい方の背中をちょっとでも押せたなら嬉しいです!

制作まわりの質問や感想は、コメント欄でもXのリプライでも大歓迎です。絵コンテの作り方でも音の話でも、細かいところはいくらでも語れますので、気軽にどうぞ!それでは皆様、良きAIライフを!次回作でお会いしましょう!😸✨

Xでは1分のティザー予告編も公開中です。リポストや感想の引用、めちゃくちゃ励みになります🙏

本作品および本記事に掲載した画像の著作権はすべてAMANOJAKに帰属します(© 2026 AMANOJAK)。MR ROBOTは各権利者の著作物であり、本文中のリンクは公式配信ページへのご案内です。本作は特定の実在の人物・団体・事件とは一切関係のないフィクションです。サイバー犯罪は絶対にダメです。